- 2026年3月の沖縄の雇用環境
- 人を紹介したくなる会社
- 厳選採用とは
- 厳選採用は中小企業には難しいのか
- 働く人の生活を大切にする
- 土日祝休み・17時閉店でも利益が出る理由
- マンツーマン接客という仕組み
- 新卒採用から働き方に合わせる採用へ
- 一人ひとりに伴走する経営
- ちゃんとやっておけば、相手から来る
- 働き手目線から生まれた収益モデル
- 採用したい人物像が明確にある
- 厳選採用は、選ぶ前に選ばれることから始まる
2026年3月の沖縄の雇用環境
このブログは、沖縄労働局が毎月発表している
「労働市場の動き」(2026年3月)をもとにしながら、今の経営環境と採用について考えてみたものです。
https://jsite.mhlw.go.jp/okinawa-roudoukyoku/content/contents/002639706.pdf
2026年3月の沖縄県の雇用状況を見ると、
- 有効求人倍率:1.08倍(季節調整値)
- 新規求人倍率:1.91倍(季節調整値)
- 正社員有効求人倍率:0.70倍(原数値)
となっています。
また、月間有効求人数は31,921人。
前年同月比5.5%減で、29か月連続の減少となっています。
原油価格や物価が上昇するなか、求人数は減り続けています。
一方で、採用に困っている企業は少なくありません。
求人は減っている。しかし、人手不足の声は続いている。このあたりは、近いうちに就業者数の動向なども調べながら、求人と就業のバランスについても見てみたいと思います。
人を紹介したくなる会社
今回は、前回のブログ
「ここで働きたい」が生まれる職場
― 土日祝休み・17時閉店の美容室 ―
で紹介した、sweet株式会社さんの事例をもとに、
「厳選採用ができる職場」について考えてみたいと思います。
以前のブログで、私は「厳選採用」について、次のように書きました。
厳選採用とは
自社に合いそうな人を、ある程度しっかり見極めて採用する方法です。
自社の社風に合う人。
職務が求めるレベルに近い人。
長く続けてくれそうな人。
そのような採用要件を明確にし、
募集内容にもきちんと書いていくことで、
応募者数は絞られるかもしれません。
しかしその分、
本当に採用したい層に時間をかけて向き合えるというメリットがあります。
一方で、募集の間口を狭くするため、
応募人数が減る可能性もあります。
そのため、この方法は、
採用要件や選考基準がしっかり作れていて、なおかつ応募者数もある程度見込める企業に向いています。
最初から応募が集まりやすい大手企業や、
地域の中でも人気のある中堅企業などは、
この考え方を取りやすいと思います。
厳選採用は中小企業には難しいのか
厳選採用は、採用したい人物像を明確にし、
その人に向けて採用活動を行う考え方です。
ただ、応募の間口を狭めることにもつながるため、私はこれまで、中小企業にはやや難易度が高い方法だと考えていました。
仮に採用したい人物像を明確に設定しても、
そもそも応募者数が少ない中小企業で、
求める人物像のハードルを上げると、
ますます応募が少なくなり、採用自体にも支障が出るのではないか。
そのように考えていました。
厳選採用ができるのは、
現状でも応募が多く、好条件で、知名度もある企業に向いている。
そんなイメージがありました。
しかし、sweetさんを取材して、考えが少し変わりました。
中小企業であっても、
働く人の目線で職場をつくっていくことで、
スタッフや周りの人が
「ここなら紹介したい」
と思える職場になる。
その結果として、
厳選採用に近い採用ができるのではないかと感じました。
働く人の生活を大切にする
前回から紹介しているsweet株式会社の代表、上地広喜さんは、
「ブルーゾーン」という、世界の長寿地域を取り上げた番組の話をされていました。
その番組の中で、読谷村の105歳の方が取り上げられていたそうです。
60歳を超えてから三線を始めたり、
さまざまなことに取り組んだり、
人とのつながりを大切にしている姿が紹介されていたとのことでした。
その話の中で、上地さんが感じたのは、
人とのつながりや、ストレスの少ない暮らしが、健康や長寿につながっているのではないかということでした。
そこから、上地さんは自社で働くスタッフについても、ストレスなく働くにはどうすればよいかを考えたそうです。
子どもと過ごす時間。
家族と過ごす時間。
親子で過ごす時間。
そうした時間を大切にできるからこそ、
幸せに働くことができ、
接客や応対でも良いサービスをしてくれるのではないか。
心も体も健康でいられる経営をしたい。
そのように考えたそうです。
土日祝休み・17時閉店でも利益が出る理由
sweetさんの理想や取り組みは、とても素晴らしいものです。
ただし、理想が高ければ高いほど、実現するのは難しくなります。
美容室で、土日祝休み。
しかも17時閉店。
その勤務体制で、どのように利益を生み出しているのでしょうか。
そこには、しっかりとした仕組みがありました。
マンツーマン接客という仕組み
通常の美容室では、美容師一人にアシスタントが付き、二人でお客様に対応していくことも多いようです。
しかし、sweetさんにはアシスタントがいません。
美容師全員が、一人でお客様にマンツーマンで対応しています。
そのため、誰か一人だけが大きく売上を上げるというよりも、スタッフ一人ひとりが自分の担当分をしっかり積み上げていく仕組みになっています。
指名のある方は、より多くのお客様を担当する。
指名が少ない方も、フリーのお客様を担当する。
予約や来店するお客様を、うまく振り分けながら運営しているそうです。
以前は、売上の高い美容師がアシスタントの手を借りながら、大きな売上をつくる形もあったそうです。
しかし、その場合、売上の多くは担当美容師の収入になり、アシスタントの人件費や育成コストはお店側が負担することになります。
そうなると、お店に利益が残りにくい。
現在のsweetさんでは、一人ひとりが自己完結型でお客様を担当するため、自分で担当した分が歩合に反映されやすくなっています。
最低保証給を超えた分は、本人の収入にもつながる。
自分の目標やがんばりに応じて給与が増える。
その仕組みが、スタッフにもお店にも収益をもたらす形になっていました。
新卒採用から働き方に合わせる採用へ
sweetさんでは、コロナ前あたりまでは新卒採用にも力を入れていたそうです。
ただ、新卒を採用すると、育成には2年ほどかかるとのことでした。
その間に退職するリスクもあります。
見習い期間であっても、人件費として一人あたり月20万円以上の出費があります。
そうした中で、コロナ禍をきっかけとして上地さんは考え方を切り替えていきます。
理美容業界であっても、
一般の会社に遜色のない職場環境をつくる。
社会保険を完備する。
有給取得を進める。
フルタイム、時短社員、扶養の範囲内、フリーランスなど、
本人が望む働き方を選べるようにする。
驚いたのは、働き方を本当に一人ひとりに合わせていることです。
フリーランスを希望していた方が、
「最初は様子を見たいので、まずはフルタイムで働きたい」となることもある。
扶養の範囲内から、時短社員へ変わることもある。
都合の悪い日は、時間を調整してもよい。 そのように、とことん働く人に合わせているように感じました。
一人ひとりに伴走する経営
収入を上げたい方には、
どのようにお客様を担当すればよいか。
どうすればうまく回転させられるか。
そうしたことも相談に乗っているそうです。
単に制度を用意しているだけではありません。
一人ひとりの働き方や希望に合わせて、
本当に伴走者のように関わっている印象を受けました。
代表の上地さんは、ある時期から
「売上を追求するのをあきらめた」
と話していました。
売上を追いかけることと、スタッフの負担を考えたとき、スタッフを優先することが大切だと考えたそうです。
その考えが、制度のすみずみに行きわたっているように感じました。
ちゃんとやっておけば、相手から来る
「本当は土曜日や日曜日も開けた方がいいと思うけど・・仕方ないから閉めているんです」
上地さんは、そう笑って話していました。
そうは言いながらも、
ある店舗では女性の店長が出産することになった際、
上地さんの方から
「日曜日は休みにしよう」
と提案したそうです。
スタッフの意向を尊重するだけでなく、
長く働いてくれている社員に返していきたい。
その気持ちが、話の中から伝わってきました。
働き手目線から生まれた収益モデル
上地さんのビジネスモデルは、
既存の業界慣習をそのまま受け入れるのではなく、
「働く人にとってどうか」
という視点から組み立てられた収益モデルだと感じました。
しかも、理想論だけではありません。
店舗ごとの採算。
スタッフ一人ひとりの働き方。
売上と給与のバランス。
予約やお客様の振り分け。
社会保険や有給を含めた職場環境。
その裏付けとなるデータも、かなり研究されているように感じました。
ここまでいけば、
中小企業でも厳選採用ができる職場になるのだと思います。
採用したい人物像が明確にある
sweetさんでは、採用したい人物像、いわゆるペルソナも明確に持たれていました。
その人物像は、現在働いているスタッフをモデルにして作られているそうです。
年齢層。
家族構成。
服装。
生活スタイル。
価値観。
物事の捉え方。
今いるスタッフと一緒に働ける人。
お店の雰囲気に合う人。
今のスタッフに近い人など・・。
上地さんは、
「類は友を呼ぶ」
とも話していました。
職場環境を整え、
そこで働く人たちの雰囲気を大切にし、
採用したい人物像を明確にしている。
だからこそ、
「この人なら合いそう」
「この人に紹介したい」
という採用が生まれているのだと思います。
厳選採用は、選ぶ前に選ばれることから始まる
今回の取材を通して感じたのは、
厳選採用とは、単に応募者を選ぶことではないということです。
まず、働く人に選ばれる職場をつくる。
働いている人が、安心して続けられる環境をつくる。
そして、その人たちが
「ここなら紹介したい」
と思える職場にしていく。
そのうえで、自社に合う人を明確にし、
丁寧に採用していく。
これが、中小企業における厳選採用の一つの形なのかもしれません。
応募者をふるいにかけるための厳選採用ではなく、
働く人に選ばれる職場づくりの結果としての厳選採用。
sweetさんの取り組みから、
そのような可能性を感じました。
次回以降は、
新しい雇用の在り方に挑戦している会社の特徴についても、
さらに考えてみたいと思います。


